高畑耕治詩集『愛(かな)


けだもの羊

花はけだもの
羊のわた毛はたんぽぽの
ゆきだるま

欲望を素直に聞いて
感動できないくびれたこころを
あたためてくれるあなたの
あかい頬のまるみ
しろい乳房のふくらみ
ゆるやかな砂丘のひろがり
こんもり憩う草たちを
おとずれ
顔をのぞかせる花へ

昆虫
いのちがけの生殖を
もう一度教えて
わずかに流れているみどりいろの血を
思いおこすから

花をおとずれ蜜蜂は
顔をさしいれ
くちばしをのばすと
頭にふりかかる花粉は
こな雪のよう
花から花へはばたくはねは
ひかりにうすらいでゆき
風のよう 舞うこな雪は
たんぽぽの
わた毛のよう

わた毛がおりてゆく
みどりの野原にちりばめられた
白い花
うつむく羊は
静物画
かぼそい声をあげ
子羊は絵の具から溶けだし
ははの乳房にかけだしてゆき
花と雪は 風にひかる
白い乳

羊は花の顔した
ゆきだるま



「 けだもの羊 」( 了 )

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