高畑耕治の詩


(かな)3

女の子の名まえを
呼び捨てたことなんて なかったんだ
いちども
名字だけならあるよ 子供のころに

さん は、いらないって
呼び捨てるのは、親だけだって
でもぼくなら
だいじょうぶ、だって
ふた文字ぶんだけ、ぼくがきみに
ふたりが
近づいてもいいってきみが
ゆるしてくれたから

このこころにいつもゆれてる愛(かな)しいきみを きみの名まえを
このくちびるにも ふるわせるよ
愛(かな)

夏はもう過ぎてゆくね とまどう殻はもう脱ぎ捨てよう
夕暮れの沁みわたるあかに焦がれて
泣くぼくはまるで せみだね
いのちは愛(かな)しい だからぼくは
こころのはねの 透きとおる葉脈をこすりあわせて懸命に
なんども なんどでも きみの名まえを
響かせたいんだ ぼくの
愛(かな)

生きられる時間はたぶん ほんのわずか
きっと いちどしかない でも
きみと出会えたこの
愛(かな)しい時間に

ぼくは呼ぶんだ
呼べるんだきみを
愛(かな)
愛してるって 伝えたいんだきみに
愛(かな) 大切な
愛(かな) 大好きな
かな かなかなかなかな


「 愛 」( 了 )

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