高畑耕治の詩


こころ絵ほん(はち)


微笑みふっくら お月さま

さびしい のに話せない
うつむいてたら
ゆるゆらゆれてる水たまり
すいよせられて
のぞきこんだら水面に
あっ
見つけたこころの
落としもの まるいもの
見あげた お空
微笑み満面
お月さま

ひかり澄むほどに
    たかく
  たかく
たかくこころ
すくいあげられ

  けんめいにあなたをさがしたあのとき
  けんめいにあなたもわたしを

うっすら うかんだ
おもかげ あなたの
おもかげ わたしの
おもかげ 愛(かな)しみのこころに
なおさらふっくら
満月の
微笑みにとけどうかもういちど ひと
愛しあえますように


   こだま


ほら かにさんがいるねって 嬉しそうな娘
おもちつきのうさぎさんだけをひたすら見てきたぼくだけど
ごめん ないしょにしたんだ


深い夜息子と皆既月食をはじめて仰いだんだよお父さん
かじられてゆくお月さん 嬉しそうだった息子
あんなに蝕まれて でもそのあと少しずつ
ひかりにまるみをとりもどしていった小さな星
太陽とこの星とあの優しいひかりの星はなかよく並んで
息子とぼくと死んだばかりのお父さんを
結んでくれた こころで手をもういちど
にぎらせてくれたあのとき
もうけして消えない


「 微笑みふっくら お月さま 」( 了 )

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