高畑耕治の詩


ほたるの歌



  イカロス


からだ弱くて
働けなくて私の暮らし楽になれない
じっと天井見あげてる

働ける場所 どこにもなくて
出かけてゆける場所 どこにもなくて
会えるひと 誰もいなくて
今日もひとり いつもひとり

学校もそうだったな
会社も
なんて遠いんだろ

時刻表がないのつらいの
決まってるのは
お腹がすくこと
ワンちゃん子猫ちゃんとおなじね
なのに私
どうして眠れないんだろ?

約束された場所
決められた時に座らないとクビになる
イスあれば不安じゃないよきっと
キスできればもっと幸せ
どこにも行くところない
どこにも行かなくていい私
どこにいるの?

仕事は疲れてつらい けど
仕事ないのはつらくて重くて疲れる
ハロー・ワーク
なんて虚しい呼び名
ハローって呼びかけても
見向きもされずにバイバイ・ワーク
どうして仕事ないんだろ?

レールに乗れば 楽
時刻表あれば 楽
生き延びる智恵 おまじない
繰り返しに染まること 繰り返しに埋もれ繰り返しに耐えること
感じすぎないこと 惰性に慣れてしまうこと 脱線しないこと
はみ出さないこと 壊さないこと
どうして仕事ないんだろ?

電車の運転手になりたかったな子どもの頃
( 線路は続くよ信じてたどこまでも )
レールは嫌いって気づいた私
船乗りになろう
( あおい海へ )
旅にでようって願った
( 遥かなひろがりへ )
船酔いひどいこと思い出した
宇宙船も無理 暗くてこわいの苦手だし
( 光が好き ) だから
飛行機に乗ろう
( あおい空へ )
飛ぼうとしたんだ
( 羽ばたいて )
あっ
( という間にからだ壊し羽根もげて )
会社に棄てられ
( 伸ばしつかまろうとした手 )
あのひとに断ち切られ
( 墜ちた )
ひとり
( もう飛べない )




「 ほたるの歌 ・ イカロス 」( 了 )

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