高畑耕治の詩


死と愛。

  星の王女さま。『 続・絵のない絵本 』


アンデルセンの『 絵のない絵本 』、知っていますか?
わたしの宝物です。
大切に想うこころ届いて、ある夜こんなわたしにも、
月は話してくれました。
ある小さな星のこと。

その星には国がありませんでした。
ですから国境はなく、すべすべ真珠のよう、
美しい輝き、つぶらな瞳なのです。
だから国民なんていません。
だれもが瞳を愛する、星の民です。

その星には軍隊はありませんでした。
戦闘機も戦車も銃も、遠い昔に捨てたのです。
過ちを、きちんと反省したのです。
核兵器?
あんなもの、愚かな時代を忘れないための、
記録文書にしかありません。
原発?
星の民は星を愛しています、
星のいのちを慈しみます、
星を穢した過ち直ちに深く恥じて、
きっぱり全部捨てました。

その星には政治家はいません。
ひとりひとりが自分の生き方の、
指導者、選択者なのです。
互いの話に耳を傾け、心を開き歩み寄ります。
独善的な命令、押しつけは蔑まれます。

その星には子どもの笑顔と、お年寄りの微笑みが、
あふれています。
みんなに見守られ、敬われ、しあわせです、
愛されているのですから。

その星には戦争はもちろんありません。
悲しく苦しく虐げられた、従軍慰安婦はもう、
ひとりもいません。
恥ずかしい歴史の過ちは償われ、語り継がれているからです。
女性は生まれながらに、美しい、
星の王女さま。
王女さまを、男性は敬い、愛し、守ります。

だからその星に王家はありません。
とてもとてもおおぜいの、
王女さまと王子さまの星なのです。
だって星の民のだれもが…、
( 人間だけ? とんでもない!
 草もお花も木も虫も小鳥も犬も猫も牛も馬も、
 パンダもコアラもキツネもタヌキもクマも、
 プランクトンもラッコもウーパールーパーも、
 お魚もイルカもクジラもペンギンも、
 あんまり多くてもう言えません! )
星の生きもの、だれもが、
ひとりひとりのいのちの主人公、
星の王女さま、
星の王子さま、
なのです。

その星の名前?
青い海の、美しい星。ほら、
あなたが、いま、生きている星、
地球の、
未来の姿です。

でもこのお話、ナイショにしてくださいね。
安心すると人は怠けがちですから。
どうして未来を、ですって?
わたくし月の、王女さま、
かぐや姫さまの、未来旅行の、
おみやげ話なのです。

王女さま、それまで、
仲良しのうさぎさんといつも、
愛する地球を見つめ、心痛め、
泣いてばかりいました。

ですから、未来旅行から帰ってきた、
星の王女さまの笑顔。
どんなに美しかったこと!
わたくし月も、どんなに嬉しかったこと!


「 死と愛。星の王女さま。『 続・絵のない絵本 』) 」( 了 )

TOPページへ

銀河、ふりしきる
目次へ

サイトマップへ

© 2010 Kouji Takabatake All rights reserved.
inserted by FC2 system